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●武蔵剣法との出逢い[5]「藤本左近傳二天一流」 伊織傳二天一流は真に貴重な武蔵剣法の末流儀であると思ったが、問題は江戸期の伝書類資料が発見されておらず、江戸期の傳流の歴史を解明することが出来ないことである(※)。これはこれからの課題だと言えるが色々資料を調べ、やはり武蔵剣法の古傳そのものというわけではないという感じもあった。史料に現れた青年期の技術を求めたがこれは伝書以外に傳が見当たらず、また内容的に技術を復元出来るような史料は存在しなかった。しかし色々な調査する中である時、心眼流の島津先生からかなり驚くべき武蔵剣法の史料、秘伝書の写しを頂いたのである。それは藤本左近傳系の二天一流の秘伝書であるが、これには九本の二刀剣法の形解説があり、その内容は大変に分かり易く、そして各系に分かれて伝承した武蔵剣法の実傳と微妙に重なる部分があり、それらを総合するとかなり明確な武蔵傳の二刀剣法が甦ることが分かってきた。 この形の復元も数年かかり、何度か挑戦して次第に正しいものとして仕上げたが、この傳の研究により肥後傳二天一流や伊織傳二天一流の形が内蔵する極意の深意が次第に判明してきたのである。実際筆者の判定ではあるが、藤本左近傳の二天一流はかなり驚くべき二刀剣法の極意傳が見事に現れており、大変に深い内容であると思う。それは極めて高度にして精妙無比なる必殺剣法であったと言えるだろう。 そしてその驚愕の内容、内蔵する極意傳を学ぶことにより伊織傳二天一流や肥後傳二天一流の深意、本当に深い芸術の価値が体感できてくるのである。
魂平 |
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