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●上森先生の業績

著名な名人鐔師「金家」と武蔵の門人、青木鉄人金家の事ではないかと同一人説を考証されたのは上森岱乗先生である。この論はかなりの反響があり、反論もあり反々論もあり、大分論争もされたが、少なくとも完全否定されることもなく、今日解説書籍には多く肯定的に解説される事も多い。

しかし完全証明されているわけではなく、未だに反対意見も多い。

その中でも殆ど否定的に考証した研究書籍としては米野健一先生が平成三年にだされた『鐔聖金家』がある。勿論「名人鐔師金家と鉄人金家同一人説」は一つの説であり、それに色々異説があることは致し方なく、各人の意見があることは当然である。

管理人としては一応肯定説派ではあるが、しかし研究者としては同説の真偽を極めんとするものであり、必ずしも一つの論には拘らない。管理人自身は上森先生に近しい関係であり、上森先生の研究を引き継ぐ立場でもあるが、それだけに先入観を出来るだけ持たず、特に反説には真摯に向かいあってみたいと思う。

●『鐔聖金家』

同書に真剣に向かい合ってみよう。実はその研究の深さに大変に驚かされた書籍であり、名著であると思う。池田先生の『金家鐔』があるが、掲載された金家鐔は遥かに多く、また鑑定のポイントを詳しく述べられている。金家研究には必須の研究書籍であると思う。

ただ多少疑問に思う点もあるので順次のべてみよう。

 

@金家二代論を採用しており、初代と二代の鑑定ポイントを「切羽代の厚さ一ミリならば初代、二ミリならば二代、三ミリ以上ならば別人」という立場をとっている。

●検討

同説は事実ならば素晴らしいと思うが根拠が少し難しいと感じられた。1ミリ鐔と2ミリ鐔の銘が明らかな違いがあれば納得できるのであるが、少し微妙である。両者の銘の差異も詳説されているが、かなり微妙であり、もし両者が別人であるとするならば筆跡がかくも似るのは不思議である。この点明らかな筆跡の差異が分別されている「信家」などは少し違う感じである。筆跡的にさほど差異がないからこそ金家一代説も生きているのだろう。

A鉄人金家と名人鐔師金家の作品を比べると雲泥の差異があるとする。

●検討

上森先生の論説の最大の弱点と問題点は「鉄人」鐔を同扱うかと云う問題である。世に「金家鉄人作」「鉄人斎作」というような鐔が存在し、これがもし青木鉄人金家の鐔そのものであるとするならば確かに名人鐔師金家ではあり得ない事になる。

鉄人鐔の問題はより多くの実物をみて検討しなければならないとは思うが、取り敢えず現時点で考察すると「金家鉄人鐔」は後代金家鐔の一端ではないと考えられるのである。

しかしだとするとこれらの鐔の年期は年代をかなり江戸初期から下る事となる。

この点において米野先生は元和八年の年期の入る「金家」鐔を採り上げ、そして別の「金家鉄人作」鐔を採り上げ、両者の銘が一致することを述べており年期の入る「元和金家鐔」が鉄人金家とする。となるとこの鐔の作者こそ年代的に青木鉄人金家その人となる。もしそうだとするならば確かに上森先生の説は殆ど成り立たない。

しかしながら良く両者の鐔、その銘を見てみると米野先生は同一銘となしているが、素人の筆者が見てもかなり違うように感じられるのである(左上銘が「元和金家鐔」下銘が「金家鉄人作鐔」良く比べてください)。管理人の判定ではこの「元和金家鐔」は別人金家、もくは模造金家、偽物金家ではないかと鑑定できる。

それは別としてこれら別人金家や後代鉄人金家などの技量は一概には判定できないがそれなりのレベルではないか思う。名人大金家は確かに素晴らしいセンスの持ち主で名人中の名人と云えるがしかし名人の技といっても全て好みがあり、また名人にも駄作もあり、是が名鐔?と疑問符を付けられるような他愛のない鐔もあることはあるのである。そのような立場であまり名前に囚われずに客観的に判定するならば、後代金家とそれほど極端な伎倆差があると捉える事は出来にくいとも感じられるのである。芸術にはそれぞれ好みというものがあるのだから。後代鐔師の作品はそれほど駄作でも下作ばかりでもないと思う。

B藤原金定と大金家ではその伎倆に大きな差異があり、両者の繋がりは考えられないのとする。

●検討

大金家は今日鐔工史上最高の名人と讃えられる名人であり、その親とも目される金定の伎倆が及ばないとしても両者に繋がり無しとするのは如何なものだろう。勿論両者の作風がまったく異質であるならば疑問符を付される事も致し方ないと思うが偉大な芸術を生んだ原形のようなものは金定鐔にはあるのであり、少なくとも類似の作風である。この点少し疑問に感じられた。

C今まで飛脚図鐔と言われていた幾つかの金家鐔を採り上げ、必ずしも飛脚とは云えないという考証をなしている。

●検討

これは確かにご指摘の通りで、単に農夫が荷物を運んでいるだけのような図もある。ただ一つの鐔の図は下半身を出しており、この点においては飛脚として判定されているのであると思う。この図は確かに飛脚的である。現時点では否定も肯定も出来ないが完全否定する必要もないように感じられた。

ともあれ確かに飛脚図を理由に年代推定をなすのは危険とは感じられた事である。

C初代二代の年代推定をしており、室町末から慶長年間ほどを推定している。

●検討

年代推定は難しい。そしてどんな推定も感性では学術的には意味がなく、どんな事でも根拠をしめしながら考証して行かねばならないと感じられる。

 

 

 

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