●5日「道場移転」 埼玉の祖父江先生の道場が移転して大きくなった。移転といっても数百メートルの近隣に改築された。六月から使われているようであるが、四日に始めて寄らせて頂いたが、畳み部分が48畳、見学席空間も四畳分ほどある。男子更衣室、女子更衣室、武器倉、男女別トイレ、給湯室まで設えられた完備した造りである。個人道場としては最高のものだろう。天井も高く、これだけあれば大体どのような武道でも出来るだろう。同道場のこれからの発展を願ってやまない。
●12日「紅葉」 新宿で指導を始めてから十八年が経つ。かなり多くの人数を指導して来たが、殆どが初伝程度で奥の世界に入って来れた者はいなかった。今まで指導してきたのは管理人の伝える古傳の極一部の部分であり、全方向的に全ての全てを指導出来た者は誰もいなかった。氣樂流の全伝を伝え者は一名、大東流は一名、二天一流は二名、無双直伝流は居合と和義の古傳型を大体伝えた者は二三人いたが、棒術を含めて全伝を伝えた者は未だ誰もいない。琉球拳法も大体の拳法型と付随する秘伝は二三人の者に大体伝えたが兵器法を含めた全伝を伝えた者は未だ誰もいない。 恐らく筆者の伝える武術も殆どの部分はいずれ失伝してしまうのだろう。今は少し記録の残して置きたいと思うばかりである。 「表みせ、裏はみせずに散る紅葉」 それなりの覚悟はせねばならぬ時期であるのかも知れない。
●16日「殺陣」 時代劇の殺陣をみていると殺陣の為の殺陣であり、また全て一元的である事に不満である。もっと古伝に法った演技が出来ないものかと思うが余りにも古伝に対する研究が少なすぎる様に感じられる。 ●「怪我」 昨日納刀における技術説明で、殺陣を含めて一般的に行われる基準的な納刀法と古伝の納刀技術の差異を説明する為、先ず一般的な方法、所謂大被りのしゃくり上げ法を演じて説明していたら、不覚にも腕上を切っ先で突いて怪我をしてしまった。幸い真剣ではなく、模擬刀で演じいたのでそれほどの傷ではないが、真剣ならばかなりの深手であっただろう。普段演じる伯耆流の横納刀や無双直伝英信流の鮎返し法とは違うが故の不覚かと思うが、しゃくり上げ法は手っとり早いが一面の危うさがある様に感じられる。また近代居合は指拾い、鐔拾いにて指を傷つける事が多い(指を落とす事もある)。古伝の納刀法は単に様式美と云う事だけではなく、身を傷つけぬ為の古人の叡智である。
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